第59話

本当にそれは困る·····。



「藤原さん·····」


「呼び捨てでいい、フジ··········、和臣でいいから」



フジ·····から、下の名前を言い直した男は、「じゃあまた明日、今日んとこで待ってる」なんて、本当に困ることを簡単に言ってのける。




「私、誰とも付き合う気はありません·····」


「んなの分かんねぇだろ?」


「ほんとに困る·····」


「男いんの?」


「··········」


いないけど。


私には侑李がいるから、絶対に彼氏は作らない。

そう決めてるの。




「いねぇなら、いいだろ?」


強引すぎる。





「·····どうして私を?」


「俺にもよく分かんねえ、けど、密葉の事は好きだから」



「··········本当に·····、付き合えません·····。来ないでください」


「密葉」


「お茶、大切に飲みますね」



私は走った。


松葉杖を持つ男が、追いつけないほど。




男は当然だけど、私を追ってはいなかった。

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