優顔

第23話

──────









「眠ってるみたいですね」


確かに、言われてみるとそうだった。

本来なら大量の睡眠薬を飲めば、吐くか…、ほぼ高確率で〝死ねない〟はず。

それなのにこいつは静かに逝った。

苦しむ顔をせず。俺の腕の中で。


それぐらい、もう弱っていたのだろう…。裸のまま死を迎えたこいつの身体には、今まで苦しんだ傷があった。


死んで…暫く抱きしめていた後、誰にも見られないように、服を着せた。

ベットに寝かせれば、もう目を開く事はないのに女の顔は笑っているように見えた。


息もしていなく、もう冷たくなった頬を撫でる。唇が変色していく…。キスをしていたときの、あの柔らかさが無い。


電話で呼びつけた男は、「…ケイシさんが、後始末するんですか?」と聞いてくる。



──…後始末…



「なんか、今まで結構死体見てきましたけど、なんて言うんですか?ほんと苦しむってより…寝てるって顔ですよね」


「…」


「ケイシさんに看取られて、その子も幸せだったんじゃないですか…」



幸せだったのか。

分からない。

こいつから「好きだ」と言われた事がない…。



「……どうだろうな…」



──…マユは俺を好きだったのだろうか。




頬から頭を撫でた。

こいつ、…マユの頭の形は歪んでいる。

昔から、親に暴力をされていたらしい。小さい時にもその暴力あったんだろう。


成長過程で、頭の形が歪んでしまった…。こんなにも弱々しい体なのに。抱きしめた時、あんまりにも細く、軽くて驚いたぐらいなのに。







呼びつけた男が「俺、運びましょうか」とマユにさわろうとしたから、「触るな」と睨みつけた。



「す、すみません……」



もう、俺以外に触れてほしくない。

自由になったお前に触れていいのは、これから先、俺だけ…。




なあ、そうだろ?




「辛かったな……ゆっくり休め……」

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