第2話

──…家に帰りたくない。

そう思ったのは、もう何度目か分からない。

中学校、小学校。

もしかしたら幼稚園の時から思っていたのかもしれない。

どうして家に帰りたくないの?と聞かれれば、「親が嫌いなの」と答えるだろう。



お金があれば、そのあたりのネカフェで過ごせるのに。私の財布の中は数百円のみ。

家に帰りたくなくて、24時間営業のファミレスでドリンクバーだけを頼み、ウトウトとしながら夜を明かした。


別にこういうことは初めてじゃなかった。

こうして家出のように、ずっと外に出ることは多々あって。

空が明るくなるたびに、朝なんか来なければいいのにと思ってしまう。





本来なら、高校へ行っているはずの18だけど、私は高校へは行っていない。それはどうしてか。話は簡単、両親が受験する必要が無いと、受験費用を出してくれなかったからだ。

こっそり貯めても、殴られて勝手にとられた。

殴る蹴るは、当たり前だった。

反抗すれば殴られる。

世間でいう毒親なのだろう。

愛のない家庭にいるのが辛かった。どうして私ばかりっていつも思ってた。

だから自由に夜を過ごせるようになった18歳から。私は家をあけるようになった。

アルバイトをしてお金を稼ぎ、ぶらぶらとする。



そんな中、出会ったのがホストであるユタカだった。ユタカと出会ったのは、着替えを取りに家に戻り両親と鉢合わせし、殴られたその後だった。


キャッチという、ホストであるユタカは客の引き込みをしていたらしい。花壇のふちに座り泣いている私に「どうしたの?」と声をかけてくれ。


聞き上手なユタカは、「つらいね…」と私の話を聞いてくれた。私の話を真剣に聞いてくれたのは、ユタカが初めてだった。



「俺、そこのホストクラブで働いてるんだ。よくこの辺りで引き込みしてるし、また泣きそうになったらおいでよ」



ホストクラブというのは、知っていた。

男性が、男性を売る場所。



「…それか、電話くれたら、今みたいに、10分ぐらいなら俺も店抜けれるから」



そう言ってくれたユタカに惹かれた。

だって私にこんなにも優しくしてくれたのは、ユタカが初めてだったから。



スマホのネットで調べて、1万円程でホストクラブへいけると知った。

財布の中には、アルバイトで貯めた3万円が入っていた。

私はお礼を兼ねてお店に行ってみた。入口にいた内勤に年齢確認をされたけど、マイナンバーカードをこの時のために申請して所持し、18歳だった私は中に入ることが出来て。



初めは店に来た私に驚いた顔をしていたユタカだけど、その後は「俺も君のことずっと気になってたんだ、名前教えて?」と、ずっと笑っていてくれた。その顔を見ていると、ああ会いに来てよかったと思えた。

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