第4話

3階の、階段から見て1番手前の部屋が、今日から俺の部屋らしかった。ベットや小さい冷蔵庫まであり、まるでどこかのワンルーム。



──…疲れた。



溜息をつきながら窓を開けようとすれば、そこにも鉄格子があり、あんまりいい景色ではなかった。

まるで、俺が閉じ込められたみたいだ。



1階と教えられていた浴室に行っても、ここの住人に会うことは無かった。多分、勝手に着ていいのだろう、綺麗な服がきちんとサイズ順に沢山並んでいた。


同じ階に、飲料水や、お弁当やパンなどが置かれていた。定期的にこれも届けに来るらしい。出入口が無いのに、どうやって届けに来るのか…。




────ここは、国が認めた研究施設らしい。



今俺がいる研究施設は、〝異常性癖〟というものを調べるんだとか。

〝異常性癖〟というのは、フェチよりも特に変わった思考の持ち主のことを言うらしい。

例えば、虫の歩く姿を見て興奮し、マスターベーションを行ってしまうなど。

人により様々。

けれどもその〝異常性癖〟の中には人を殺めてしまうのも多々あり、この研究施設が作られた。

まあ、簡単に言うならば、〝未来の犯罪者を減らすため〟に、この建物が作られたという事。



だからそのためは、この研究施設では何をしてもいいらしい。

〝異常性癖を調べる研究施設〟ということは、調べるために、〝異常性癖〟をオープンにしてもいい。



この建物の中なら、虫でマスターベーションをしても、人を殺めても、誰も何も言わない──…。




その日は眠った。

特に枕が変わったから、眠れないとかそんな神経質な感覚は持ち合わせていないから。





どれぐらい眠っていたのか、──コンコン、と、ノックの音が聞こえ、多分、それによって起こされた。

だれだ?と、まだ頭がぼーとして、ベットの上から起き上がるのに時間がかかった。

今までいた自分の部屋じゃない。

そうか、昨日から、この部屋に住んでるんだっけ…と、ぼんやりとしながら扉を開けた。




部屋をノックしてたそいつと目が合う。

そいつの容姿を見て、眉をひそめた。

なぜならそいつの髪色がピンク色だったから。

いや、ピンクゴールドと言うべきか。

派手な色。

昨日の男とは違い、丸い目をした、〝男〟というよりも体つきも〝少年〟に近く。


何歳?

中学生とか?

いや、ここって何歳から入れんの?



「あれ?今まで寝てたの?もうお昼だよ?」



顔を傾ける仕草も、やけに女みたいだった。



「えっと…だれ? なんか用事?」



正直、寝起きはあまり、機嫌が良くない。



「ああ、そっか。初めまして。俺はなぎ。5階に住んでる。えっと千尋くんだっけ? 」


「そうだけど…」


「君、昨日、『報告』行かなかったでしょ?メビウスの人が『報告』の時、俺に言ってきたの。千尋くん忘れてるかもだから教えてあげてって」



報告…?

そういえば、勝に言われたような?

ああ、あれ初日から行かないとだめだったのか。



「ああ、悪い、あとから行くわ…」


「行くなら、直ぐに行った方がいいよ?」


「そうなのか?」


「今日は14時から女の子が入ってくるけど、『報告』の時間と被っちゃうと、千尋くんの分が無くなっちゃうから」


「…」


「俺らのお下がりでいいなら、それでいいけど。お下がりはオススメしないよ、女の子、ほぼ死んでるから。死体が好きならそれでいいけど」



きっと、こいつは頭のおかしいことを言ってるんだと思う。けど、ニコニコ女みたいに笑うから、おかしいことなのか分からなくなる。

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