第69話
「晴陽…」
「なんだその顔、外にバイクが無かったからか?面白い顔すんなよ」
晴陽が、霧島の方に近づく。
晴陽は「お前はバカだよ」と、「ナナが最後のチャンスあげたのにな」と、裏切り行為をした男を、鋭い…何の感情もない冷たい目で見下した。
チャンス…。
何も喋ろうとしない霧島。
「お前が脅されてやった、って嘘でも言ってたら…、ナナはお前を切らなかったのにな?」
切る…。
「ナナを助けるため? お前それは、ナナのプライドを踏みにじったのと変わらない」
プライド…。
「お前のためにずっと俺の犬をしてくれてたナナを裏切ったんだ。お前はもう終わり。さよなら」
晴陽の犬…。
「俺のため、俺のためってなんだ…」
何も知らない親友…。
「最後だからいい事教えてやる、霧島」
「ナナ、俺のためってどういう事…」
「お前のせいで、ナナは俺に服従してくれてんの」
「俺のせい…」
「俺と柚李は仲良いの。俺が靴舐めろって言ったら跪いて舐めてくれる仲だよ」
「はるひっ…」
「男の〝嫉妬〟は、見苦しいね」
──嫉妬…。
「切るぞ」
そう言った晴陽に、静かに、頷いた。
霧島は〝何故〟っていう顔を止めなかった。
「ワケは聞いた、拷問だけはやめてくれ…」
俺が言った言葉に晴陽は鼻で笑い〝お優しい〟と言うだけだった。
その後、部屋の中に入った。
何故か俺の顔をみて、安心の顔をする女に告げる。
「終わったから、もうすぐ帰れるよ」と。
そんな月は静かに、涙を流していた。
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