第63話
「ふうん?」
どうでも良さそうに、少しだけ口角を上げる男に見られるのが嫌で。
嫌すぎて。
「みないで…」と顔を隠す。
それでも見るのをやめない、赤い眼鏡の男。
見るのをやめないというのは、「晴陽」と、その人の声の距離が変わらなかったから…。
たすけて、
たすけて。
そう思って泣くのに、唯一助けてくれる柚李も、ここにはいない……。
「ん?」
ギシギシ、と、音が鳴る。
「霧島、出てったよ」
その人がそう呟いた時、そのベットのしなる音が消え。「…ふ、」と笑った瞬間、中に挿入ってるものが入り口の方へと向かう感覚がし。
ずるりと、きつく、痛く、重かった圧迫感が無くなった。
抵抗していた肩も、動く。
はあ、と、呼吸をし、おわっ、た…?終わったの?と、枕を抱きしめた刹那、胸にあったハルヒの手のひらも消えた。
「…分かりやすすぎじゃない?」
「そうか?」
そして、そのままふわりとシーツをかけられ。後ろを見ればハルヒがベルトを鳴らし自身を服の中に戻すところで…。
それを見て、また安心の涙が出た…。
「気づいてたのか?」
「まあ、いろいろと」
「御幸、今から流雨の所にいてくれ。何をするか分からない」
「はは、了解。総長命令なら仕方ない」
ミユキと呼ばれた男は、「じゃあおつかれ」と、今度こそそこから姿を消した。
なに、なんだったの、だって。だって今のは。
「……しないって、言ったのに…」
欲も出していない、今のはまるで。
シーツにくるまる私は、その人を睨みつけた。
扉をあけ、まるで〝聞こえるように〟。ううん、この行為を〝見せつけるように〟した男。
「んーでも、悪いことをするのが俺らだから」
悪いこと…、
悪いことってなに?
「……おね、がい、だから…帰してよ……」
「まだ無理」
「あと何回、やればいいの…」
「もういい、俺が解放するまでは誰にも手は出させないようにする」
もういい?
ほんとうに?
でも、この人は嘘をつく…。
しないと言いながら、今日私をおかした。
信用できない。本当に私は解放されるのか。勘違いって分かってるくせに…。
シーツにくるまる私の頭を、その人がゆっくりと撫でた。
「気持ちよかったよ、ありがとう」
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