俺、勇者なのに弱すぎるんだが
マウンテン
第1話
闘技場は熱気に包まれていた。観客たちは興奮した表情で、闘技場の中央に立つ二人の戦士を見つめている。
片方は生まれながらにして勇者とされた青年。もう片方は、ただの人間である少女だ。
「どっちに賭ける?」
「決まってるだろ。勇者にだ。田舎から出てきたばかりで初戦だって言っても、勇者は特別だからな」
「わかってるさ、そうじゃなくて、夢を見てみるかって話だよ」
「バカ言うな。お前、毎回そんなこと言って金がなくなってるんだろ」
「男はロマンだろ?」
「あーあ、ほんとに賭けやがったな」
「おい、もう始まるぞ。急げ!」
観客たちの視線は再び闘技場に戻り、中央に立つ少女を見つめる。黒髪を風になびかせ、堂々とした姿を見せていた。
「おいおい、ただの人間が俺に挑むってのか? ケガする前にやめとけよ」
青年は誇らしげに笑う。
「勝負は最後まで分かりません」
少女は静かで落ち着いた声でそう答えた。
「はじめ!」
レフェリーの合図とともに戦いが始まった。
「嘘だろ…?」
「勇者が圧倒されてる…だと?」
困惑する者、焦る者、狂喜する者。闘技場は一瞬にしてカオスに包まれた。
「終わりです」
少女の剣が勇者の喉元に向けられ、完全に勝負は決まった。
少女に賭けた者たちは歓喜に沸き、逆に勇者に賭けた者たちは頭を抱えていた。勇者の敗北は、誰も予想していなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます