第22話
ここに来る前、私の1日の食事は100円だった。月に1度3000円を渡される。
それを使って朝昼晩の用意を自分でしろとの事だった。
親戚か何なのか分からない人達は、その3000円を私に与えることに対して「勿体ない…」といつも呟いていた。
私はモヤシを買ったり豆腐を買ったり。納豆1パックだけを朝ごはんにしていた。
おかげで、体型は細い。
けど、ここに来てからは毎食パンが出る。
「適当に食え」と言って渡してくるタカ。目が見えなくて何のパンか分からないけど。
手触りと、匂いで、ある程度何のパンか分かるようになった。
ウインナーが入ってるらしい惣菜のパンを食べていると、また目に違和感がして。
ぱちぱちと瞬きをした。
変なモヤが襲ってくる…。
目をこすっていると「なんだ?」とタカに話しかけられた。
「目?痛むのか?」と、珍しく私の心配をしてくる。ああ、違う。見えたら、売り物になるから喜んでいるんだ。
「……なにか、いつもと違うんです…」
「見えるのか?!」
「…いえ…」
「なぁんだ」
見えてねぇのかよ、と不機嫌になるけど。
それでも「一応、せんせーに連絡入れとくか」と医者らしい人を呼ぶらしい。
電話をしているタカの声を聴きながら、ここに来る前は、風邪をひいても自力で治していたな…と、ぼんやりと考え込んでいた。
医者らしい人が来て、その人は何かと私に質問してきた。痛みとか、どんな風に見える?とか。
正直にモヤがかかっていることを話した。
たまに、カチカチ、と何かの機械音がしてた。
医者はいう。
「まだ完全に見えていないけど、戻りつつあるのかもしれない」と。
それを嬉しそうにしていたのは、タカだった。タカはすぐにケイシに連絡をしていた。
医者は、「精神的に、安らぐことがあったのかもな」と。タカはケイシに夢中で気づいておらず、私1人でその人の言葉を聞いていた。
医者の言葉で、あることを思う。
安らぐ…、そんなのユウリしかいないと。
もしかしたらこの目は、ユウリと会話をしたら戻るのかもしれない…と。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます