第20話

見えないのに、分かる。



「いつも怖い顔って言われるけどな」


「こわい?」


「目つきが悪いらしい」



そう言われても、あまり想像出来なかった。

いつも睨むような顔をしてるってことだろうか?



「…俺からしてみれば、あんたの方が優しい顔をしてると思うけどな…」


「…わたし、ですか…」


「肌白いし、透明感があるっていうか…」



透明感?



「綺麗な湖で暮らしてるって感じ」



よく分からない例えをしてくる彼に、口元を押さえて、ふふふ、と笑った。「そんなの、初めて言われました」と。



「だな、俺も初めて言った」



ふ…と、含み笑いをしている彼は、「目は…」と、少し声のトーンを変える。



「完全に見えないのか?」



完全に?



「はい、真っ暗で…。陽の光も…」


「精神的って聞いたけど…」


「…そうみたいです…」


「戻ることは…」


「…分かりません…」


「ここで、誰かに何かやられたのか?」




誰かに何かを…。

そう言われて思い浮かぶのは、バラバラになった写真…。宝物だった。ケイシによって破かれた。今でも無くさないようにポケットの中にある。



けれどもそれが理由か分からない。

売られなくないという気持ちがそうさせているのか。



「…分かりません…、けど、ここに来る前の方が酷い生活だったので…」


「…」


「原因が分からないんです…」


「そうか…」


「私…、多分、あと数日でここを離れるんです。見えないままでも…お金になるらしくて」


「……」


「こうして偶然に会えるのは、最後だと思うので…。今日…あなたに会えて良かったです」


「……うん」


「あなたのこと、忘れません」




例え死んだとしても…。





「…俺も忘れない。ずっとあんたのこと、覚えとく」

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