第26話

「おい」


ドスの効いた声が聞こえた。

振り返ると、そこにいたのは



「き、稀雄…」



今日も相変わらず彫刻品のような綺麗な顔をしている稀雄だった。



「…はあ!?き、稀雄ってあの…!?」

「わかったならその汚ぇ手どけろ」



男の人は稀雄の顔を見ると、焦りながら私を解放してくれた。



「チッ……行くぞ」



そう言うと、今度は稀雄が私の腰を軽く抱いて歩き始めた。先程の男の人とは違って嫌悪感は全くなくむしろ心臓が速まって仕方ない。

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