第71話

「あんたに裕太はもったいない。馬鹿な女。自業自得よ」


「なっ―――、てめぇふざけんじゃねぇよ!!」




真っ赤な顔をして怒ってるらしい元カノは、右腕を振り上げた。


殴られる。そう思った。

殴られたら殴り返してやる。そう思っていたのに。突然、裕太の元カノらしい化粧の濃い女が消えた。



「きゃあ!!」という、叫び声と共に。



「大丈夫?!」と、元カノの友達は、元カノの方に駆け寄った。

私を殴ろうとした元カノは、何故か廊下で膝と掌を着いていて。



「な、何すんのよ!!!」


大声を出した元カノは、私の方を見た。

というよりも、私の斜め前にいる男へ⋯。その男を見た途端、怒って真っ赤になっていた顔が、真っ青に変わっていく。



―――ヤバい。



例えるなら、そんな顔。

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