第57話

10月上旬、莉子と一緒に溜まり場へ来ていた。

倉庫近くの影でコンビニで買ったお茶を飲みながら、ぼんやりと少し離れたところで潤くんと話す裕太を眺めていた。


裕太とあの話し合いをして以来、裕太は私を抱かなくなった。

裕太の部屋に行っても、裕太は私に手を出さなくて。


一緒に寝たりはするけれど、私を引き寄せるだけで、服を脱がしてくることは無くて。




「まだあの電話くんの?」



アイスを食べながら、莉子は呟く。



非通知の事だと直ぐに分かった私は、「うん」と答える。



「裕太くんには?」


「⋯言ってない⋯」


「はあ?まだ言ってないの?」


「うん」


「なんでよ」



なんで?



「まだ電話だけだし」


「そうじゃなくて⋯、その女、やばい奴だったらどーすんの?」


「やばい奴?」


「西高とか清光ってさ、レイプとか当たり前じゃん」



アイスを食べ終わった莉子は、そのゴミを袋の中に入れた。


レイプ⋯。

あまり好きじゃない言葉。

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