第37話
その時、前を歩いていた2人が途中で止まり。
前が止まったから、自動的に私たちも歩けなくなり。
4人とも止まったはずなのに、カンカンカン⋯と、誰かの階段を登ること音が聞こえてきて。
その時、私の手を繋いでいた裕太が、まるで私を隠すように体を動かした。
「おつかれっす」
そう発したのは、潤くんだった。
‘その人’が私達を通り過ぎる時、裕太は‘その人’に軽く頭を下げる動作をして。
私を隠している裕太がいるから、私は‘その人’の後ろ姿しか見えなかった。
高い身長。
どちらかといえば細い体つき。
痛みの知らないサラッとした短い黒い髪。
‘その人’は、動じることなく、何も喋ることなく、今まで私達がいた部屋の中へノックもせず入っていき。
「⋯なにあれ、潤が挨拶したのに無視するって⋯」
莉子が不満そうにつぶやいた。
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