第73話

タッパーを返しにきただけなのに、どうしてこうなってしまったのかと首を傾げながら足を進めた。

私のおばあちゃんとおじいちゃんと同じで、今どきの家よりも古く、階段を登るたびにギシギシと音がなる。


2階には2つの扉があり、満子さんに言われたとおりに左側の襖を音が出るようにノックした。

だけども中からは何も聞こえなくて。


スーーー···っと、ゆっくりと襖を開けた。



そこは私と同じ、畳の部屋だった。


奥の方に布団をひき、壁の方を向いて眠っているらしい薫の姿が目に入った。枕元には、携帯を充電していて。



真ん中には机。机の上には雑誌。そのそばには座椅子。そのそばには上着。上着のそばには学校の鞄と。

たいして荷物は無いが、畳の上に散らばっているので片付いているわけでもない。かといって、汚いほどではなく。



一瞬、上着でも畳もうかと思ったけれど、さすがにそれはやめておいた。世の中には人のものを勝手にさわることを嫌がる人もいるから。

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