第60話
「送らなくていい」という私を、「付き合わせたから」とよく分からない理由を言う薫に、結局教室まで送ってもらった。私の手には、鞄と、薫が買ってくれたペットボトル。
「また放課後来るわ」
「悪いよ···」
「もういいから、そういうの」
「いいって?」
「俺にいちいち気を使わなくていい」
気を使わなくていいって···
だって、わざわざ家まで送ってもらうのに?
たとえ家が隣同士でも···。
「んじゃ、また」
背中を見せて去っていく薫。
そういえば、薫は何組なのだろう。
どうして私のクラスを知っていたのだろうか。
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