第50話

連れてこられたのは人気のない階段だった。私の教室から離れている場所。どうやらここは旧校舎になるらしい。




「はい」


階段の途中に座り、薫は鞄の中から取り出した風呂敷を私に渡してくる。小さい箱が入っている感覚がする風呂敷包み。



「どうして私に?」


「さあ?」



薫はまた鞄の中から、大きめの風呂敷包みを出した。予想通りそこから男特有の大きなお弁当を取り出す。



「これ、箸」


「···ありがとう」



渡された割り箸。



「っていうか、さあって?」


もうとっくにお弁当の蓋を開けている薫に問いかける。薫が分からない満子さんの気持ちを、私が分かるはずもなく。

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