第34話

私を守ってくれたのは──…

ずっとずっと、探して、一晩中私の傍にいてくれた人。壱成さんがいなかったら今頃、私はまだあの駅のロータリーにいたかもしれない。



「それでも、私は何もしないでって壱成さんを拒絶したの…」


「うん」


「それなのに、また会いたい、って、虫が良すぎると思うの…」


「佳乃の気持ちは分かる。でももっとお前もわがままになっていいと思う」



──わがまま?



「…さっきも様子見って言ったけど、あいつらの根本的な性格は変わらないから気をつけた方がいいし、何か起きそうなら反抗したっていい」


「でもそれじゃあ、お兄ちゃんが悪く言われる」


「それは脅しだ。そう佳乃に言えば、あいつらは佳乃が大人しくなるって分かってる。脅してるのと変わらない」


「…でも」


「…いいか佳乃」


「……」


「さっきも言ったように、お前は自由」



──…自由…。



「今度は佳乃が考えて、行動していいんだよ」



私が考えて、行動する?

私自身が、何も縛られず、自由に行動をしていいと?



「昨日の夜、家に帰りたくないって言ったのが、〝本物の佳乃〟なんだから」

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