第89話

「代わるわ」と、私の指先が震えているのに気づいた海吏が、私の持っていたスマホを奪った。



海吏はそのスマホを耳に当てると、「どうも」と、世那に向かって呟いた。




「⋯―――ああ」


不安でちらりと海吏を見れば、海吏は私を見ず世那の方に意識を飛ばしているようだった。



まだぐっすりと眠っている可愛い2人。





「こいつ、あんまり上手く話れへんやろうから」


「ちゃう⋯、1人。兄貴の方に遺伝してる」


「⋯どっちも、まあ、どっちか言うたら嫉妬」


「嫉妬して、その嫉妬部分を取ろうとすんねん」


「その対象は、俺とひな。弟には嫉妬せぇへん」


「けど、」


「お腹の中の子に、嫉妬してる。ルイがどういう動きするか、分からん」


「やからルイの嫉妬を、マシにしたい」


「教えてほしい、そういう施設、どこあるか」

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