第86話
「ルイを心配してるのはひなだけちゃう。俺も心配や。だからこそ診てもらうんや」
「⋯っ」
「分かったな?」
ポロポロと、涙が出る。
「⋯分かったな?」
海吏にも、私の気持ちは伝わっているはず。
泣き出す私の頭を引き寄せて、抱きしめる海吏⋯。
その海吏の背中に腕を回した私は、うーうーと、海吏の胸元で泣いた。
そのまま、落ち着くまでしばらく泣き続け。
そして、ある事を思い出した私は、話せるようにずずっと、鼻水を吸った。
「⋯海吏⋯っ⋯」
「うん」
「⋯ひ、ひきだし⋯」
「うん?」
引き出しの中。
私の、大事なものが入っているその場所。
初めて私が選んだルイの服。
それは、お下がりでヒカルも着たことがあるもの。
洗っているけど、ヨダレのシミが消えない海吏が選んだおもちゃ。
神城ルイと書かれた診察券。
そして、
―――『何かあれば』
私は引き出しの方へ、震える指を向けた。
「名刺、はいってる⋯」
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