第78話

クセなのに、どうして私を傷つけないのか。



「⋯煌っていう人がいて⋯」



それについて思い出した私は、懐かしい名前を出した。

サドマゾヒズム。

私の為なら、何でもしてくれる人。

私を好きだと言ってくれた人。


煌の名前を出すのは、数年ぶりだった。




「⋯こう? こう⋯、⋯⋯それって、橘煌?」


「たちばな、かは知らないけど、あの建物の中にいた異常性癖を持つ人だよ」


「なら同じやつ、俺を殴ってきた銀髪やろ?」



そう、銀髪。



「う、うん、え、殴られたことあるの?」



その事にびっくりした私は、「いつ?」と聞き返す。




「あいつらがひなを助けに来た日、俺、そいつに殴られてん。覚えてない?」



覚えて⋯?


ない?



確かに、そんな事も、あった気も⋯する。




「ご、ごめん⋯その時、ちょっとパニックで⋯。あんまり覚えてない⋯」


「まあ、そうやんな。殴られてん、思いっきり。⋯―――んで、そいつが何?」




煌は⋯。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る