第22話

そう思って、私は扉の向こうに声をかける。



「帰って」と。



「ごめん⋯、開けられない。帰って」


「ひ、なた」


「帰って」





あの建物から、ここは随分離れてる。

わざわざ、ここまで来てくれたってこと。



ねぇ、この場所は誰が知ってるの?

あなただけ?

魁輝は?魁輝は知らないの?




雅に聞いたとも考えにくい。

だって、雅と会った場所とも、ここは離れているから。




「⋯―――あけて、でないと、扉を壊すよ」


「⋯だ、め⋯」


「陽向、言ったよね。俺はずっと、陽向の味方だよ。これからも」


「⋯⋯っ」


「開けて」





私は抱えているルイを見つめた。

私は、会うわけにはいかない。



この綺麗な目が、届く限りは。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る