バイストフィリア

第17話

私たちが住むのは、とあるアパートの一室。

いつでも移動できるように。

いつでも逃げ出せるように。

最低限の荷物だけ。


洗濯もまとめて近所のコインランドリーに行っている。冷蔵庫は元々備え付け。



部屋狭く、あまり物はない。



けれども監禁されていたあの部屋と比べれば、精神的な気持ちが全然違う。


見つからない限り、私はこの子達とずっと一緒にいれるのだから。


それだけで、私は幸せ。





「ぐぅーぐぅー」



ぐるぐる、と言っているらしいヒカルは、紙にクレヨンを使ってラクガキしていた。



「ままー、どーど!」



まま、どうぞ。

どーどの言い方が昔のルイに似ていて、私は笑顔でそれを受け取る。



「ヒカル、これなあに?」


「ぱぱっ!」



大きな大きな、赤い円形のラクガキは、海吏らしく。色しか合っていないそれにクスクスと笑う。

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