第89話

魁輝は面会時間が始まると同時に来て、ギリギリまで一緒にいてくれる。



かろうじて食事を取れるようになった私に、担当の先生が退院しようかと言ってきたのは、入院してから1ヶ月がたった頃。



やっと水も飲めるようになった私は、まだまだ吐き気はあるけど、入院当時よりもだいぶマシになっていたから。




あと少しでつわりの期間が終わるかもしれないと思っていたから、すごく嬉しくて。

やっと終わりが見えてきたから。



面会にきた魁輝にその事を伝えれば、「良かった」と、私を抱きしめてきて。



合計で7キロ体重が落ちてしまった私は、ガリガリに近く。



「なんか食べたいもんは?」


「氷系の、アイス食べたい。酸っぱいの」


「分かった、下のコンビニで買ってくる」




妊娠悪阻から、普通のつわりになった私は、吐くことも少なくなった。


それを知っている魁輝は、私が食べたいと言えば、すごく嬉しそうにする。


ずっとずっと、魁輝の前で苦しい表情しかしてなかったから。

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