第76話
「はあ、…しばらくは遠距離だね…。また来年ね?」
「遠距離じゃなくて冬眠な」
流雨がザリガニに話しかけていて、それに呆れたようにヘラっと笑うのは御幸だった。
今日もチャラいた雰囲気の男。
水槽の中を入れ替えた流雨は、「おやすみ」と水槽を外にやっていた。
そう言えばザリガニは水温が10度以下じゃないと冬眠しないから。暖かいこの部屋の中じゃ冬眠できない。
21時頃、「月、帰ろう」と、にこにことしている流雨に腰を引き寄せられた。
そして柚李も後ろからついてくる。
「大変だねぇ」と他人事の御幸。
そしてその光景を気にしていない表情の晴陽は煙草を吸っていた。
「るう、あのね…」
「ん?」
「あの…」
車に乗り込み、いつも通りホテルに行こうとしている流雨に、戸惑いながら話しかけた。
ホテルに行かないのは、お母さんが帰ってくる時だけだから。
「今日は…このまま帰りたいんだけど…だめかな…」
「どうして?」
「というか、1週間…」
「1週間? テスト勉強でもするの?」
テスト勉強じゃなくて…。
「ナナが気になる?」
柔らかく聞いてくるけど。
その言い方には少しだけ棘があった。
気になる、気になるけど…。
そうじゃなくて──…。
「せいり、だから…」
流雨にしか聞こないようにそう呟くと、流雨は「あ…」という、表情をして。
「そっか、月に1回くるもんね…」と納得の表情をした流雨は「俺は生理でもできるけど、女の子はお腹が痛いって言うもんね?」と、可愛い顔で優しく笑い。
私を抱き寄せる流雨は私にだけ甘く。
「じゃあ今日はこのままバイバイしようか」
柚李と運転手がいる車内でキスをしてくる流雨のキスを受け止める。
受け止めるのは晴陽の言う通りにしなければならないから。
「もう俺の舌に慣れた?」と言ってくる流雨の体に快感を覚えてしまっている私は、晴陽のいう〝相性の怖さ〟に怯えていたような気がする。
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