第67話
本当に何も知らない。
気がつけば終わってる。
陰口をしていた女の子たちは、〝流雨〟のことばかり聞いてくる。
それどころか魔窟にも友達として行きたいなって言ってくる…。
流雨にキスマークをやめてっていったのは、半袖になって体育ができるようになるためなのに…。
〝土曜〟のことを何も知らない私は、ただ苦しいぐらい流雨に抱かれていただけ。
「ばいばい月ちゃん」
「またあしたね!」
「流雨さ、…晴陽さんたちにもよろしく伝えてね!」
ニコニコとした彼女たちが手を振る。嫌でもわかる媚びを売る感じに、戸惑いが隠せなくて。
〝正式〟に〝姫〟になったらしい私は、放課後、急ぎ足で校門に向かった。
その後ろには、護衛の2人。宮本くんと富木くん。
校門にはもちろん柚李がいた。車からおりて、私の姿をとらえた柚李は絶対に視線をそらすことなく。
「こんにちは七渡さん」と、いつものように頭を下げる彼ら達に「報告」と告げる柚李。
宮本くん達は口を開き、「クラスメイトの女の子たちと結構喋ってました」「全て授業受けてます」「変わったことは無く」といつも通り、今日の報告をしていた。
いつも「分かった」って言っている柚李。それなのに何も喋らない柚李は「で?」と、2人に聞き直し。
「え?」
「それで?」
「え…あ、はい、…今日はそんな感じで…」
「クラスの女の名前は?」
柚李は「分かった」って言わない。
「何人?」
そう言った柚李の目は鋭く。
いつもは聞いてこない柚李に戸惑っている彼らは、少し声が小さくなった。
「えっと、…4人ほど…」
「
「よ、4人です!」
「名前」
「は、はい。岸田と桜井と」
「フルネーム」
「あ、岸田恵と、さくらい…──」
「外見は?」
「が、外見ですか?」
「き、岸田がこれぐらいの髪の長さで…」
話しかけてきたクラスメイトの女の子たちの外見を黙って聞く男。
「会話の内容は?」
「内容…ですか?」
「内容聞けないぐらい離れて護衛してたのか?」
声も、低い。
「や、そんなことは…」
「じゃあ言えるだろ」
「えっと…流雨さんのことを…主に聞かれていました…」
「それから遊びにいきたいと…」
「何処に」
「NOAHに…です」
柚李の眉が、怖いぐらいによった。
それを見た2人は恐怖からか肩を狭め。
「分かった、明日からその女共は月に近寄らせるな。護衛のお前らが流雨目的で近づいてきた女を対処できなくてどうする?」
「は、はい」
「すみません…」
「あと、授業。お前らどこに座ってる?」
「え?」
「まさか近くじゃないって言わないよな?」
「…」
「…」
近く、じゃない。
宮本くんは列が2つ離れてるし、富木くんは宮本より遠い。
黙り込む彼らに、ため息を着く柚李…。
「お前ら護衛なのに何してる?」
「……すみません…」
「はい…」
「月を1番窓際の後ろにして縦と横で挟め。分かったな」
「は、はい」
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