第2話

その名前が耳に届いた時、びく、と体が震えた。晴陽。本当に聞きたくもない名前…。



「え、でも、やっぱり副総長の流雨るうさんじゃない?」



流雨、名前を聞いただけでも、唇が痛い。

お願いだから教室の中で話をするのはやめてほしい。



「えーでも、流雨さんは冷酷って有名だし」


「冷酷だけど可愛い顔してるからいいんじゃん?」


「わかる〜、あの笑顔にやられるよね?」


「私は柚李ゆうりさんだなぁ」


「柚李さんやばいよね?!近衛隊長でしょ?近衛隊長って総長より強い人しかなれないもん!」


「まあ総長を守る役目だしね〜」


「それをいうなら御幸みゆきさんもいいでしょっ、御幸さんの情報のおかげで奇襲できるんだから〜」


「御幸さんに遊ばれたい〜」


「えー、私やっぱり晴陽さん〜!!」




もう、これ以上聞きたくない。

そう思ってイスから立ち上がり、教室を出ようとすれば、どこからか声が聞こえた。




「本当に雲の上の人達なのに、なんであの子なんだろうね?」っていう、冷たい声が──…。



ほんとうに、かわってほしい。



「流雨さんが、あの子のこと、凄く溺愛してるらしいよ」


「いいなぁ私も流雨さんに愛されたいっ」


「ほんと、なんであの子? 地味なのに」




学校の中は、そのくだらない話でもちきりだった。泣きそうになる。

そんな教室から出ようとする私の後ろからは、2人の生徒がついてきた。



「トイレですか?」

「もうすぐチャイム、なりますよ?」




学校内での、私の〝護衛役〟。


なんで、こうなってしまったんだろう……。

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