第63話

「だった、とか言うんじゃねぇよ。諦めんなって言ったろ。俺はずっとお前のことが好きなんだから」



「え……」 



怜央が私のことを好き?そんな、本当に?



「あの時からお前に合わせる顔がなかった。守り切れなかった。リーダーの裏切りにも気づいてやれなかった」



あれは怜央が悪いんじゃない。零斗の嘘の脅しに騙された私が悪いんだ。

怜央が思い悩むことではないのに。



「だから、気持ちなんて伝えられなかった。今日も伝えるつもりなんてなかったのにな」



怜央が私の頬に手を添える。

とてもあたたかく、優しい手だった。



「好きだ、薫。昔から、ずっと」



また私の目から涙がこぼれる。でも、今度は悲しくなんかない。



「私もだよ、怜央」



あと10分の幸せ。でも、記憶が無くなっても怜央をきっと好きになる。

その時はまたこの気持ちを伝えるからね。

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