第34話

すごい偶然が続くものだ。



「へえ〜悠真くん元気そうなんだ」


「ああ。で、悠真と美耶結婚するんだって」


「へえ〜結婚?結婚!?」



淡々と話す賢人はどんどん元気がなくなる。


私は知っていた。


賢人は大学時代の私の親友であり、悠真くんの彼女として付き合っていた美耶のことが好きなことを。


美耶のことが好きな賢人を私はずっと見てきた。



「そう……」


「俺、大学時代の頃から美耶が好きだった」



知ってるよ。


口が裂けてもそんなことは言えないけど。



「告白するチャンスなんていくらでもあったのに」



今にも泣きそうな賢人の震えそうな声。



私は賢人になんて言えばいい?


慰める?悠真くんと美耶の結婚を喜ぶ?


わからない。私には。



親友としては美耶の結婚はとても喜ばしいこと。


だけど賢人のことを考えたら素直に喜べなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る