第4話

「ゴホッ...っ..」


ほら、むせてる。


あ~ぁ、涙目じゃないよ、可哀想に。



「大丈夫?」


顔を覗き込んでそう聞いたら、



「...っ..は、はい。だ、大丈夫です」


と真っ赤な顔でそっぽを向かれた。



ウン...どうやら、女慣れしてない様だね。




「おいおい、お嬢、これ以上社内にファンクラブの会員を増やさねぇでくれよ。紅葉さんの機嫌が悪くなる」


「ファンクラブってなによ?海藤さん」


私はアイドルじゃ無いんだからさ。



「お嬢、知らなかった?ファンクラブの事」


「はっ?優磨は知ってるの?」


「知らねぇ奴なんて居ねぇよな?颯斗さん」


私から颯斗さんへと顔を向ける優磨。



「あ...まぁな?」


と答えた颯斗さんにギョッとする。



ちょっとちょっと...当の本人が知らないってどういう事よ。



「ファンクラブなんて勝手に作られちゃ困るわ」


と低い声で言った私に、


「ひっそりストーカーされるよりはファンクラブと称したモノがある方が、人物が特定されて良いって」


と言う優磨。



ストーカーはされたくないけど...ファンクラブもどうかと思うわよ。




「いやいや...ファンクラブとか要らないから解散よ解散」


と憤慨する私。




「ま、今さら解散とか無理だ。この会社だけじゃねぇもん。街全体に浸透してるからな、諦めて」


「はぁ?」


眉を寄せて優磨を睨み付けた。



「心配すんなって、俺が会長してるから会員はバッチリ把握してる」


ピースした優磨。



「なんなのよ、それ?て言うか、優磨が会長ってどういうことよ」


優磨に詰め寄る。


マジでどうなってんのよ。



「あ~それな。去年の年末ぐらいからお嬢の周囲で変な奴らがウロウロしててさ。探ってみたらファンクラブとか出来ててな?俺がそれを乗っ取ってやった」


シシシ...すげぇだろ?と胸を張る優磨に溜め息が漏れた。



色々と面倒臭い。



私にファンクラブ出来るとかどうなってんのよ。



「ファンクラブなんて出来た意味が分かんない」


溜め息混じりにそう吐き出した私に、


「帝王様と一緒に居るお嬢の知名度は半端ないって事だよ。諦めな」


と肩をポンポンと叩いた颯斗さん。



本当...勘弁してよ。


マジで疲れる。

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