第3話
三人で社長室を出てエレベーターに乗り込んで一階へと向かう。
うちのビルは5階建て、紅葉の所に比べると小さめではあるが5階建てで十分だと思ってる。
三階で上部の階数表示が点滅すると、エレベーターが停止して静かに観音開きされていく。
「...あっ...支社長、すみません」
先客の私を見て驚いた顔で一人の社員が緊張したように固まった。
「気にしなくて良いわよ。乗って」
奥へ下がると、優磨と颯斗さんが私の両隣へと守るように立つ。
「あ...す、すいません」
申し訳なさそうに背中を丸めて乗り込んでくる社員。
度々こんな風に社員の人達と出会うけど、いつも緊張されてしまう。
そんなに大勢雇ってる訳でもないから、出来たら和気藹々とやれたら良いと思ってるんだけどなぁ。
もう一つの支社から来た人達は、アドの娘である私をやたらと遠い存在にして崇めてくれたりする。
なんだかなぁ.....って感じ。
「おっ、そのエレベーター待ってくれ」
駆け足でやって来るのは見覚えのある人。
「海藤さん、駆け込み乗車は危ないですよ」
と呆れた顔なのは優磨。
海藤さんは元々紅葉の所の会社の人で、平塚さんと一緒に美智瑠さんがうちへの移籍を二人に勧めてくれたんだ。
因みに彼の部署は人事部。
平塚さんは営業部。
「おう、悪い悪い。お嬢、久し振り」
優磨にニカッと笑ってから私へと顔を向けた海藤さん。
「うん、久し振りですね」
「アルバイトを雇いてぇんだけど、面接に付き合って欲しいんだけど」
「分かりました。颯斗さんと日時を詰めておいてください。よろしくね、颯斗さん」
海藤さんに頷いてから、隣の颯斗さんを見上げる。
「分かりました。海藤さんメールを入れておいてください、こちらで調整します」
頷いた颯斗さんは海藤さんを見る。
「おう、頼むわ」
この人は昔から変わんないので気持ちが楽だ。
人事にいちいち口を出すつもりは無いのだけど、入社させる人だけは私も自分の目で見極めたいから面接に同席するようにしてる。
私と海藤さんの会話をギョッと目を見開いて、先に乗り込んでた社員が見ていることに気がついた。
「あ、海藤さん、彼驚いてるわよ」
と言えば、
「お、関根、別に気にすんな、これが普通だ」
と関根と呼ばれた彼の背中をバシバシ叩いた。
痛そうな顔してるから、もう少し力加減をしてあげた方が良いんじゃないのかな?
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