第83話

le lacrime di la dea(レ ラクリメ デイ ラ デア)に勤めて何度目かの休み。


お店以外に知り合いの居ない私は、別段誰かと遊ぶ訳じゃない。


最初の何回かは、仕事と環境に慣れてなくて日々の生活にクタクタで寝て過ごした。


お店にも生活にも慣れた今日この頃。



せっかくの休みに家に居るのも勿体無いと思った。


ま、思い立ったのは夕方の三時なんだけど。


ほぼダラダラ一日を過ごしていたのには変わらない。



何処かに行くのなら、もう少し早く決断するべきだったのかも知れない。




窓の外からカフェの前を通る道を見下ろす。



「ん~ん、どうしよう?」


休みの日に家でダラダラしてるなんて、19歳のやることじゃない。



出掛けるか...少しは早いけど夏服でも見に行こうかな。


繁華街のメイン通りに今時の服屋さんが沢山建ち並んでたよね?


Tシャツにパーカーを羽織って、デニムのハーフパンツのまま、携帯と財布だけを持って家を出る。


もちろん鍵も持ちましたとも。


バイクじゃなくて徒歩なので軽装で問題ないよね?



カンカンカンと階段を軽快に降りて、カフェの裏庭に出る。



パーカーのポケットに両手を突っ込んで路地を歩き出す。


昼間の顔をした通りを歩くと、すれ違うのは学生や主婦達で。


そんな人達を横目に目的の場所を目指す。




晴れた空は青く、太陽は眩しい。


たまには外も良いもんだ。



暗がりに出歩いてばっかりいちゃダメだと改めて思った。




あの人達とはあの日以来会っていない。


いや、正しくは避けている。


もちろん私が。



カフェには、時々あのビルからの注文が来る。


しかも、私を名指しで。


その度に理由をつけて他の皆に変わってもらってたりする。


だって、極力関わりたく無いんだもん。



あの人達は危険な感じがするからね?


色んな意味で...。



第一、あんな公開プレイを見せられるなんて真っ平ゴメンだわ。



それに、この街を統べるお偉いさんなんかと簡単に近付いたりなんてしたら、夜の蝶達にどんなに敵視されるか分かんないしね。



君子危うきに近づかず。


それが一番だ。

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