第74話

ブオンブオン....ブロロロロ~



バイクに乗ったまま細い路地を進みカフェの裏庭に到着する。


何時もの位置にバイクを停めてバイクを降りると、ヘルメットを脱いでロックすると、タンデムにくくりつけた箱を地面に下ろす。




「うわっ、寒い。体冷えちゃったな」


冷たい指先を擦り合わせる。



急ぎだったから、カフェの制服のまま行ったけど寒かったぁ。


まだ5月末だもんなぁ。


薄着でバイクはキツいな。



あまりにも急がしすぎて、ストックしてた材料が足らなくなって買い出しに行ってきた。


バイクに乗れる私が一番機動力あるからね。




地面に置いた箱を両手で持ち上げて裏口へ向かう。



「おかえり」


タイミング良くドアを開けてくれたのは颯斗さん。



「ただいまです」


「ごくろうさん。助かった」


と私から箱を受け取ってくれる。



「いえいえ、間に合いましたか?」


「おう。良く頑張った」


いつもぶっきらぼうな颯斗さんが笑うとキュンと来ますよ。


これぞ、イメケンマジックよね。



厨房の方へ歩いていった颯斗さん。


私はドアを閉めて裏口を施錠してから彼を追い掛けた。




「おかえり」


厨房に入るまカウンターから進ちゃんが声をかけてくれた。



「ただいま」


カウンター越しに見える店内は落ち着いて見える。



「暁ちゃん、お客さん来てるよ」


たいちゃんがカウンターまで来ておいでおいでする。



お客?


この街にこの店の知り合い以外顔見知りなんて居ない。


眉を寄せて警戒する。



まさか、泉達じゃないよね?


この街までやって来たって言うの?


ゾワゾワと黒い何かが沸いてくる。



せっかく見つけた心地い居場所を奪われたりしたくない。



「私に?」


訝しげに眉を寄せる。


もしかしたら声は震えてたかも知れない。



「うん、こっちこっち」


何も知らないたいちゃんは陽気に手招きしてくれる。



「...あ、うん」


怪しまれないようにポーカーフェイスを保つ。


万が一、あいつらだとしてもこんな店の中じゃ何もできないはず。


それに、私はあいつらなんかに負けたりしない。



たいちゃんの手招きに誘われる様にカウンターから出た



心臓は気味悪いほど静かだ。

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