第14話

女のくれたタオルは俺の浴びた返り血で鈍い赤に染まっていく。


「こんなに返り血を浴びてたのかよ」


と顔を歪めた俺に女は言う。


「今更なに言ってるの? 貴方の着てる白いスカジャン赤く染まってるわよ」


「はぁ? マジか」


女の言葉に慌ててスカジャンを脱ぐと、無惨な色に染まってた。


これ、結構気に入ってたんだけどな。



「それ、先に水洗いだけでもしておいた方が良いわよ。血は落ちにくいし」


他人事の様にそう言うと女はキッチンへと消えていく。


まぁ、女にとっては他人事に間違いねぇけど。


いつも俺も周りに群がる女なら、喜んで我先にと世話をやきたがるのに。


俺に興味を示さない目の前の女が面白いと思えた。



「・・・ああ、分かった」


そう返してスカジャンを畳んだ。



少しして戻ってきた女の手には二つのマグカップ。



「どうぞ。温かいお茶よ」


「ああ、サンキュ」


受け取ったそれは温かくて、一口飲むの冷えきった体を中から温めてくれた。



「それ食べたら、お友達か誰かに連絡して迎え来てもらって」


女はそう言いながら、ソファーに座る。



「分かった」


本当、俺に興味なさそうだよな。



静かな静寂が流れる。


何も聞いてこない女が不思議でしかたなかった。


血濡れで変な奴らに追いかけられていた奴を見たらどうしたのか? と聞いてもおかしくないはずなのに、女は何も聞こうとしない。



「何も聞かねぇんだな?」


痺れを切らして聞いてみる。


「うん。余計な事を聞いて巻き込まれたくないもの」


サラッと返答する女。



「ククク・・・正直過ぎるだろ?」


「自分が可愛いもの」


「面白れぇ女」


思わず笑みが漏れた。



「どうでも良い。あ、湿布取ってくる」


湿布を思い出したらしい女は、部屋の隅に置いてあるチェストへと向かう。



チェストの上に置かれてた小箱から湿布らしい物を取り出すと、それを持って戻ってきた。




「冷湿布よ、足首に貼って」


「サンキュ」


マグカップをテーブルに置いて、それを受け取るとスラックスの裾を捲って、靴下を脱ぐ。


そして、熱を持つ足首へとそれを張り付けた。

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