第70話

結翔Side


はぁ···あれだけ楽しかった女の子とのデートは、今じゃ全くと言っていいほど面白くない。


目の前で優雅に微笑む彼女は、人目を惹くほどの美人なのは間違いないのに。

有り余るほどの豊満な胸を強調したドレスに、フェロモンたっぷりの唇。


これを見ても触手が動かないって、俺病気かな。

愛想よく笑い相槌を打ちながら食事を進めるも、美味しいはずの料理がまったく美味しくないし。


快斗の奴は今頃、瞳依ちゃんとデートしてるんだよなぁ。

あ〜マジで羨ましすぎる。


「キング、どうかしたんですか?」

上目遣いに俺を見ながら、心配そうな声をかけてくる彼女。


「あ···あぁ、少し仕事が忙しくて疲れたかな」

アハハと愛想笑いを浮かべて前髪をかきあげた。


「それは大変ですね。食事を早めに切り上げて部屋で休みませんか?」

上に部屋を取ってます、とルームキーを見せてくれた彼女の瞳には期待が詰まってる。


前なら、溜まったものを出す為に二つ返事で頷いただろうな。

毎日遊ぶのに疲れて、最近じゃ週に2日だけにしたって言うのに、その2日も面倒に感じるなんてね。


今までだらしなく下半身の赴くままに過ごしてきたバチでも当たったんだろうか。

女の子を前にしてもワクワクしないなんて、やっぱ病気だな。


「ごめんね。折角だけど食事が終わったら帰るよ」

眉を下げて申し訳なさそうに言えば、彼女はあからさまに気落ちした顔になる。

そんな顔されても、ちっとも気持ち動かないんだから仕方ないよね。


「···そうですか」

「うん、ごめんね」

これで、俺から離れていくならそれはそれでいい。

目の前の彼女も2回ほど寝た事があったはずだけど、もうそんな機会はないかもな、なんて思った。


女の子の柔らかい肌に触れて、欲を吐き出して、楽しめたらそれで良かったはずなのに。

最近じゃ心が満たされないんだよね。

どんなに吐き出してもダメで。

目の前で喘ぐ女の子に、冷静になってしまう俺がいる。


いつから、こんなだったかなぁ。

体は満たされても心は満たされない。

消化不良もいいとこだよね。


あ〜瞳依ちゃん、今何してるかな?

彼女の事を思うと浮上してくる気持ち。

快斗と2人で買い物してんのかな。

早く切り上げて、そこに合流したいと、心が叫んでた。

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