第2話

日本語の基礎を叩き込まれた私はロシアから亡命した樺太の民の息子という形になり、東京の商家の家に婿入りする事になっていた。奥さんになる人は私の事情を知らない。ご両親は雄弁な明智さんから政治家にしたい人間がいるから東京で足場を固めるには鈴木の名を借りる他ないと頼み込んでくれたらしい。。私はとりあえず樺太でのエピソードを考える日々だ。縁談もうまく進み私の名前は鈴木啓示となった。奥さんは美智子。私のこれからを担う人間としては一番の味方。まぁ明智さん次第で私はすぐに破綻してしまうので、そう言うのもあって冷静に彼女との関係を築いていきたいと思っている。

「啓示さん。こちらのお客様啓示さんのおすすめが聞きたいんですって!なんでもヨーロッパのお偉いさんに出すお菓子を探してこいと言われて宛は啓示さんしかいないと思ったそうです」美智子は振り向き私に言葉をかける。

「丸ぼうろなんかどうでしょうか?家に窯さえ有れば作り易いと思いますよ」

「丸ぼうろか聞いた事はあるな。。作り方とか詳しく分かりますか?」

「ちょっとお待ちくださいメモしてきます。何人分で何食分なんでしょう?何食か食べられので有れば違うモノもメモしますよ」

「一食だし主人も日本のモノも食べて頂きたいと言う事で馴染み易いモノが一つ有ればと言う事なので丸ぼうろだけで良いよ」

「そうですか!少しでもお力になれて良かったです。丸ぼうろはカステラと同じ材料でできますのでカステラのお話もすれば、相手方もより馴染むと思いますよ」啓示は材料と書き留めたメモを持ちお客様に渡す。

「いくらだい?少し多めに払うよ。レシピは君頼みだしね」

「ありがとうございます。美智子さん計算は済んでるかい?」

「全部で五十銭少々です」

「じゃあ60銭渡しとくよ!いつもありがとうな啓示さん。美智子ちゃん」

「「まいどありがとうございます」」

「美智子。商売上手いな。。40銭ぐらいのもんだったろ」

「あそこの使用人はよく変わるから多く取っても分かる前に変わりますよ」

「そうか。男は買い物に元々疎いからなぁ。君と居ると勉強になるよ」

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