第33話

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穂高は元々、スカウトというか、声はかけられていたらしい。というよりも、今のトップの1人が穂高の兄だから、「お前も来るんだろ?」という当然の扱いだったそうで。


だけど兄弟関係があまり良くない穂高は、その話に全く乗らなかったらしい…。



「……本気で言ってんのかよ」



体調も少しずつよくなり、自分なりに考えた秋頃。私はその事を穂高に伝えた。



「本当だよ」


「廻されたの、忘れたのかよ」



忘れてない、忘れないに決まってる。

〝あの日〟から外に出るのも辛いほどだったのに。

父親であっても、男の人が嫌になるぐらいなのに。

部活にもあまりいけず、結局、体調不良で棄権になり私の最後の部活の大会も終わった。



「穂高が、倭を友達って言ってくれたから…」


「だからって」


「穂高が覚悟を持ってくれたのに、私も覚悟を持たないと……」


「……俺は手段を選ばない、入ったら黛派の上に行く。お前はどこに入る?」


「…」


「今度は俺がお前をやるかもよ?」


「いいよそれでも。だって私たちの最終目的は同じなんだから…」


「……」


「将輝派は、絶対にむり…。近づきたくない…」


「……」


「穂高と一緒に行けば、また倭が勘違いするかもしれないから…」


「…」


「ごめんね穂高…」


「…わかった」


「私、穂高のお兄さんがいるところに行くね…」

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