第92話

「嘘!だって、だって、蛍の声はっ⋯、知らない!いなかった!絶対にいなかった!!!」


「声⋯?」


「顔、見えなかったから!! ずっと、耳で!覚えて⋯!!」



いなかった。

蛍みたいに、優しい声の人は、いなかった!!


絶対に絶対に、いなかった!!!


どうしても信じたくない私は、「いなかった!!」と叫ぶ。


ありえない、そんなの⋯。

ありえないありえない、絶対に⋯ありえない!!




「俺⋯あのあと⋯喉に⋯炎症おこして⋯治療してんだよ⋯」



絶対に、いなかったのに。



「湖都と、2回目⋯会った時⋯喉おかしかったろ」



病院の中で。



「あれ、風邪とかじゃなくて⋯」



ゴホゴホと、苦しそうに息をしてた⋯。



「完治するまであんま喋るなって言われてたのに、カラオケ行って⋯、声、自分でも分かるぐらい⋯前より低くなってた⋯」



なんで、そんな事言うの?

どうしてそんな嘘をつくの?

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