第58話

そんな事ないけど?



「じゃあ、さっき、バイクに乗らなかったのも、そのせい?」



体と、体が、触れ合うから。

正直に頷いた私は、蛍の顔を見れなかった。



「もしかしてさ」



考えるように、呟いた蛍。



「毎日、迎えが来んのも、男が怖いから?」



迎えが来るのも。

男の人が、怖いから。


その通りだ。

1人で、出歩けないから。


何も言わない私に肯定とみなしたのか、蛍は

「そのトラウマって?」と、口にする。



トラウマ?

言えるわけない。


たくさんの男に犯されたと?

身体中、白い液体で汚れたと?



―――口するのも、恐ろしい。




「男に、何かされたのか?」


「⋯」


「何された?」


「⋯」


「言うのも、辛いってことか?」


「⋯」

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