第52話

彼の姿を見た時、―――どうしようと思った。


まさかだった。


私は、歩いて迎えに来てくれたとばかり思っていて。



「よぉ」



彼の傍には、大きなバイクが停められていた。

多分、それに乗ってきたらしい蛍は、「どーぞ」と、黒色のヘルメットを私に差し出してきた。



それに戸惑ってしまう。


だって、バイクって⋯。




「湖都?」



いっこうに動かない私を不思議に思ったのか、蛍は顔を傾けてくる。


ジーパンに、半袖とラフな格好をしている蛍。


名前を呼ばれてハっとした私は、「ご、ごめんなさい⋯」と、ヘルメットを受け取り⋯。



大丈夫だと思っていたはずの私の指は、微かに震えていた。

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