第50話

翌朝、お母さんに「お昼、友達と食べてくるね」と言ったら、お母さんはすごく驚いた顔をした。



「大丈夫なの?」と。



ずっとずっと、送り迎えをしてくれるお母さん。外へ行く時お母さんがいないのは、あの事件以来初めてで。



「うん、迎えに来てくれるみたいだから」


「迎えに?え? 女の子?」


「ううん、1ヶ月ぐらい前に、病院であった⋯茶髪の人」



そう言えば、さっきよりも驚いた顔をして。




「ほ、本当に?大丈夫? だって⋯」



その人、男でしょ?と。


お母さんが口に出す前よりも、想像できた言葉。



「大丈夫だと思う、その人に対して⋯、怖いとか⋯感じないから」


「けど、」


「大丈夫だよ、お母さん」


「⋯何かあれば、連絡するのよ?」


「うん」



お母さんに笑って返事をした私は、自室に戻り、11時に迎えに来るはずの蛍との待ち合わせに遅れないように、準備を始めた。

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