第5話
カツンカツンと、音を立てながら階段を降りて、廊下を歩く。
三つの足音が輪唱する。
姫との約束の時間までは後数時間。
会えると思うと気持ちが逸る。
まったく、単純な男だ。
それでも、会いたいと思っちまうんだから仕方ねぇよな?
しかしまぁ、煌哉がよく許したね?
俺は火の着いてない煙草を口に銜えたまま、片方の手をズボンのポケットへと突っ込んだ。
昼休み中の廊下は騒がしい。
俺達を見て慌てて端に寄って道を作る連中の横を無言で通り過ぎる。
「おつかれさまです。」
「こんにちは。」
野太い声と下げられる頭。
軽く手を上げて一瞥すればチームの連中で。
「きゃーっ!」
「颯真様~!」
黄色い悲鳴と誘うような瞳。
前ならばここで愛想よく笑顔を向けて手を振った。
そして、その日の性欲処理を相手を選んでた。
だけど今はそんなの虚しいことだと知ったから。
もう、愛のない行為なんて俺に必要ねぇ。
姫と出会って少しはマシな男に慣れただろうか?
「拓夢く~ん!」
「広夢く~ん!」
後ろに控える双子を呼ぶ甘い声。
無言で冷めた視線を送る拓夢と、笑顔で手を振る広夢。
対照的な対応に少し笑えた。
「可愛子ちゃん達、悪いけどもう君達の相手は出来ねぇよ?」
へらりと笑いながらそう言う広夢は、最近姫の友達と急接近中。
女関係をばっさりと清算して、純愛ってのになってるらしい。
ふらふらしてたこいつを変えた女は凄いと思うよ。
まぁ、相手が相手だしな。
広夢も中途半端な覚悟じゃ手は出せねぇよな?
姫の怒りを買うことは得策じゃねぇし、第一に相手の女の素性が・・・・・なぁ?
まぁ、恋は全ての障害を見えなくしちまうもんだけどな。
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