FILE4. デート

第43話

「いやいや、ダメだろうよ」



それはある日の大学構内のカフェテリア。取っている授業がそこそこ被っているので遭遇しやすい空斗と私は、こうしてたまに一緒に食事をするようになった。玲美と時間が合わない時に限ってだけど。



「お前、週刊誌に撮られた芸能人がその後どうなるか分かってんのか? 特に城山琉偉とか、女性ファン多いだろうが。お前だってネット上で顔出して活動してんだから特定すぐだぞ」



私とデートをしたがっている琉偉に対してどうしたらいいか相談すると、やはり反対された。


最初は城山琉偉が私のファンだというのを私の妄言だと思っていたらしい空斗も、琉偉とのやり取りの画面を見せるとようやく信じ始めたらしい。



「だよね。玲美にも言われた」


「そりゃ誰でも止めるわ。つーか、ちょっと考えりゃ分かることを俺にも相談してくるって、実はお前もデートしたいんじゃねーの」


「……はあ?」


「有名俳優に気に入られていい気になってんじゃねーんすかぁ?」


「うっさいんだけど」



テーブルの下で足を蹴ってやると、意外と痛がりな空斗は「いってえ!!」と必要以上に大きな声を出して苦しみ始めた。ざまあみろ。


別に琉偉とデートしたいわけじゃない。ここまで尽くされて何も返さないのがムズムズするだけだ。返報性の原理というやつだ。



「まぁ、っつっても芸能人なんてどうせ遊びまくりだからな。それに適したデートスポットはあるんじゃねえの。城山琉偉に聞くのが一番早いだろ。それか、家デートとか。集合住宅なら入る時間ずらせばバレないんじゃね?」


「家……」



琉偉が私によからぬことをしないのは分かっているが、一人暮らしの男の家にあがるのは少々気が引ける。


ていうか琉偉は一人暮らしなのか? 私、琉偉のこと何も知らないな……。



「ま、やりすぎてスキャンダルにはならないように気を付けろよ」



空斗は私と琉偉のことにはあまり興味がないらしく、私の話を聞く片手間に今日の配信で使うであろうシナリオを読み込んでいた。

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