触れた物語の感想をかくだけのエッセイ

ようひ

みいちゃんと山田さん 無料版

最初からこの物語の感想を書くのはぶっ飛んでますが、お許しください。

久しぶりに感情を揺さぶられた物語でした。


実は以前に話題になったときに、Kindle版をダウンロードしてありました。

今日Kindle内を整理しようと思って、「そういえば呼んでなかったな」と読んだ結果……なぜこれを読まなかった、と後悔しました。

現在Kindle版は削除され、マガポケ版が配信されています。読んだらめちゃくちゃパワーアップしてました。嬉しいですね。

今回はKindle版の感想です。


この物語をひとことで言うなら、花火のような儚い物語です。

生きるのがちょっと下手な女の子たちが、自分に与えられた環境から抜け出そうとする、そんなお話です。

個人的には、みいちゃんよりも山田さんのほうが気になります。みいちゃんは見たままぶっ飛んでいる子ですが、山田さんがすごすぎる。好奇心の塊です。どっちかというと山田さんのほうが危ない気がしますが、それはさておき。

なんといってもみいちゃんの可愛さと、物語のエグさのギャップがすごいです。みいちゃんはDVされていて、その描写もリアルで、さらに出てくる男性もリアル。とにかく人間の負の部分がシンプルに描写されています。思わず「うおっ」とうなるレベルです。だからこそ、みいちゃんの儚さが際立つのですが。そのみいちゃんの儚さが尊い。例えるならハムスターを尊いと思うような、そんなお話です。


では、創作者視点でのお話です。

この物語は「12ヶ月後に死ぬ」という結末が先に表示されています。

過去に話題になった「100日後に死ぬワニ」と同じ手法です。

やっぱりこの手法は強い誘導力がありますね。この先に結末を明示する手法は、ミステリーでよく使われる手法です。死体が転がって「誰が殺したのか?」と分析していく。この物語でも「みいちゃんが殺される」ことが1話で示されます。そうすると「なぜ死んだのか」「誰が殺したのか」「どう死んだのか」が自然と気になります。そして合わせて「みいちゃんの人間性」「周りの人との関わり」という人間ドラマ部分も浮き彫りになります。そうしてふたつは最終的に「みいちゃんの死」でひとつになる。手法としてかなり丁寧に作られています。

内容としても、暴力や裏社会というものは読者の興味を惹きます。大きな出来事が起きていなくても、自然と引き込まれてしまいます。題材そのものが持つ魅力もありますね。

あと最近「絵がきれいでない」ことが良いと思うことがあります。ぱっと思いついたのが「地元最高!」「Vtuber草村しげみ」など。絵の綺麗さよりも「話を読めるか」どうかだと思います。いくら絵がきれいでも、話がつまらなければ読めないのですが、この逆は成り立つのです。絵がうまくなくても、話が面白ければ読めるのです。そして逆に絵にコストを割かないので、話がすんなりと入ってくる。上記の作品も「話の構成」で読者を引っ張ります。みいちゃんもまた、話で惹き込むタイプです。


ダラダラと書きましたが、話の内容がリアルな分、とても惹き込まれてしまう物語でした。かなり心を打たれました。みいちゃんがこんなに一生懸命に頑張っているのに、生きるのが下手だけど頑張ってるのに。でも死んじゃうなんて。

そんな情緒がぐちゃぐちゃになる話でした。「マイブロークンマリコ」を読んだ時も同じように感情がぐちゃぐちゃになりました。


すばらしい作品をありがとうございました。


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