第4話
あ・・・もう一人忘れてた。
怒られる所だったわ。
ここ日本にも私を愛してやまない友が居る。
「アリス~」
ほら、大声で叫びながら体を揺らすように手を振りながらこちらに駆けてくる彼女。
伊藤冴子(イトウサエコ)、彼女こそ私をこの国で庇護して支え、無償の優しさをくれる人物だ。
ってか、目立ちすぎだし。
出来れば公共の場では、騒がないで欲しかった。
それでなくても、金髪で美人な母は目立つと言うのに。
ま、もちろん、私も目立つ要因であることは自覚してる。
さっきから、チラチラと視線を向けてくる人達がいることぐらい気付いてるし。
だからこそ、悪目立ちは止めて欲しかった。
彼女には、屋敷についてから連絡するべきだったと後悔する。
飛行機に乗る前に到着時間を知らせてしまった数時間前の自分を呪う。
「アリス~おかえりぃ」
ひゃっほ~い、なんて言いながら抱きついてきた冴子に、小さい溜め息を漏らした。
「・・・だだいま、冴子。相変わらず煩いわね」
久し振りに会った友人に呆れ顔を向けることを許して欲しい。
「んもう、相変わらずのツンデレね」
なんだ、そのウインクは。
それにツンデレって、どこが、デレた?
数時間飛行機に缶詰にされた後の冴子はキツいな。
「はぁ・・・とにかく離れて。こんな場所で立ち止まるのは良くないわ」
冴子の両肩をトンと押す。
「あっ・・・そ、そうね」
周囲をキョロキョロ見渡した冴子は申し訳なさそうに眉を下げると、私から離れた。
「あ、ママンお久しぶりぃ。会いたかったよぉ」
隣で私達を見て微笑んでいた母に気付いた冴子は、母に抱き付いた。
背丈の小さい母はすっぽりと冴子に包み込まれる。
「さえちゃん、お久しぶり。わざわざ、亜理子を迎えに来てくれてありがとね?」
母の魅惑のスマイルだ。
大抵の人間はこれで虜になる。
ほら、周りの男性が顔を赤らめてこちらを見てるし。
「あ~ママン、変わらず笑顔が可愛い」
こらこら、冴子まで顔を赤らめんじゃないわよ。
はぁ・・・溜め息が漏れた。
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