はじまりの章
現在
第3話
キィィーンと甲高い機械音と、幾つものざわめき、雑踏に囲まれたまま、降り立ったばかりの空港に立ち竦む。
忙しなく行き交う人達。
私だけがポツンとそこに取り残されていた。
大きな窓ガラスから見える景色な何処か懐かしい感じがして。
胸をキュンとさせた。
切なさが込み上げてくる。
辛くて逃げ出したこの場所に再び舞い戻ってきたんだと。
三年ぶりの日本は、私が旅だった時とちっとも変わってない様な気がした。
「亜理子(アリス)、ボーッとしてないで行きましょう」
自分を呼ぶ声に、頭が覚醒する。
「うん、分かった。ママ」
頷いて歩き出す。
私に向かって笑顔でおいでおいでと手を振る女性は、上垣内エルザ.ミカエル(カミコウチエルザ)、実の母親だ。
「お嬢様、荷物の方は私が回収しておきますので、先に迎えの車に向かってください」
40代後半の渋味のある男が母に言う。
この人は、所謂執事って奴。
もっぱらお母さんの面倒を見る係りと言った方が正しい感じがしないでもない。
ちなみに彼の言うお嬢様は、ママの事。
「分かったわ、折村(オリムラ)さん」
そう微笑んだ母に、
「屋敷からの迎えが到着してるはずですので、この先の出口を目指してください」
と自分の腕時計で時間を確認してから、母へとそう告げた。
追い付いた母と並んで歩く私は上垣内亜理子.ミカエル(カミコウチアリス)20歳。
薄いブラウンの瞳と、長いブロンドの髪、薄いピンクの唇、白い裸、そして日本人離れした顔をつき。
それが私の特徴。
母がハーフなので、私はクォーターってことになる。
人からは、色んな意味で興味を持たれる・・・。
母親譲りのこの容姿と背後にある地位を狙ってくる輩がもっとも多いけど。
だけど、本国には心を許せる友が三人居る。
彼らは唯一、私を私だと見てくれる人達。
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