第33話

「結婚してないのか?」



泰三の視線が、ギュッと拳を握る私の左手を見つめ、

その泰三の視線に、私は返事に詰まった。



「……ええ」



「そうか。けど、なんか意外だったな」



「意外?」



「お前は落ち着いてたから、とっくに結婚していると思ってた」



「……」



本当に驚いているような少し笑った顔を見て、やっぱり、時の流れを感じた。



それと同時に、

少し……切なくなった。



泰三は確実に前に進んでいると気付いたから。

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