第二十章   決別のカウントダウン

point of view by kohaku

第2話

通り雨のはずが、いつしか土砂降りになっていた。






地面に倒れた六織を残し、公園を飛び出た。





総司君に、リクの場所だけを告げて携帯の電源を落とす。







私はどこに向かおうとしてるんだろうか?





声が枯れるまで泣き叫んでも、周りの人には聞えないほどの土砂降り。






まるで私の心の中を映すよう・・・・。







金獅子の神楽坂と笹井一樹からリクを庇った事で、リクのプライドを傷つけてしまった。




差し伸べた手を払いのけられた時・・・・それに気づいた。





私はなんて愚かしい事をしてしまったんだろうか・・・。




動かない体で、リクは私を必死に守ろうとしてくれていたのに・・・。







私を助ける為に、リクは大怪我をした。




そしてそれは今もリクを苦しめてる。




動かない下半身。





それがどれほど大変な事なのか・・・・当事者じゃなくても容易に想像はつく。





それなのに、私は自分を守ってくれた彼を忘れていた。






その上、そのプライドまで傷付けてしまった。






そんな自分が許せない。






どうして・・・忘れてたのよ。



どうして・・・傷付けたのよ。




私はいつも大切な事を忘れてしまうんだね。








こんな私が愛想を尽かされても、文句言えない。






リクが望むなら、傍に居て彼の手足になりたかった。




たとえ、召使の様に思われても、彼を支えようと思っていた。





記憶を取り戻してから、リクと向き合う機会を持てなかった。





イヤ・・・持とうとしなかった。






リクが、何も言わないのを良い事に、私はきっと甘えていた。







このまま、この関係でいられるのならと・・・・。






「馬鹿だなぁ~私。」




立ち止まって、大粒の雨が降る空を見上げた。






リクは優しいから私を責めたりしない。





愛する者に自分だけ忘れられるなんて、ホントなら耐えられないよね?





そんな愚痴、一度も漏らさなかったリク。




私を傍に置いてくれたリク。




なのに、私は何をやってたんだろう・・・・。





きとんと話し合ってれば、こんな事にならなかったよね。






ただ、傍に居たくて。



ただ、好きでいたくて。





向き合う事に目を背けた。

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