第4話
「なに…っ」
「…ねぇ」
近づき過ぎた綺麗な唇からこぼれ落ちる低音が、私の耳を支配した。
「……っ」
「もっと俺の事…知りたくない?」
繋がっていない左手がゆっくり髪を滑り落ちていく。
首元をグッと引かれ、柔らかいものが唇に当たった。
男女の経験が無いわけではない。
けれど、まるで物語の中のような非現実世界にいるようで、この場所でキスをされている事になんの嫌悪感も抵抗も起きなかった。
砂浜に押し倒されて、
『あ、でも、気をつけて。ソウさん女にだらしないから』
そう言っていた友達の声が過ぎる。
ーーなのに、
次の瞬間には、深く甘くなったキスに、身も心も頭の中まで支配された。
なんて巧みな男だろう。
この男が与えてくれるものが何かはわからないい。
けれど、とても心地いいものだと思った。
「…名前、なに?」
「マナ」
名前を口にしながら、今度は自分から舌を絡めた。
深くー深くーーー…
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