第3話

「ライブ見ました」



「俺の事知ってんの?」



「さっきのライブかっこ良過ぎます。一発でファンになっちゃいました」



「へぇ、嬉しいな。じゃあ、俺と話すの緊張する?」



顔を覗き込まれると、その瞳に吸い込まれそうになる。

赤面しているだろう顔をパッと逸らした。



「夜の海を怖がるような男には緊張しません」



「ファンだったら緊張しろよ」



くくっと堪えたような笑い。



「それと今は別でしょ」



そう思わなければ、こんな風に話は出来ない。



ステージの彼とこの彼は別人。



「俺、ソウ。ファンなら知ってると思うけど」



出された右手を見つめる。

細くて角ばって、男らしい手だった。

それをぼんやりと見ながら、私も右手を差し出した。



指先ぐ触れ合う、瞬間。



グイッと腕が引かれて、私はソウにつんのめったように覆い被さりそうになる。

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