第49話

放課後


バイトがある七美と美羽は先に帰って


達也から、クラスの友達と約束があるからと連絡が来た


しばらく達也と他愛のないやりとりをして


それから私も教室を出た


階段を降りて


1階の廊下を渡った先にあるロッカールーム


『…』


ロッカーにもたれるようにしてスマホを弄る


弘人がいた


『…なにしてんの。』


私に気付いた弘人は


「お前のこと待ってた。」


そうやって、見透かしたように笑う。


「一緒に帰ろうって言ったじゃん」


『約束なんてしてない』


上靴からローファーに履き替えて


ロッカールームを出ようとする私の腕を


後ろから掴んだ


『…』


グラウンドから


野球部の声が聞こえる


校舎に響く


吹奏楽部の楽器の音



「優。」



あなたに名前を呼ばれるたびに


私の心は


こんなにも簡単に


あの頃に




引き戻されるんだ…

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